【2026年最新版】テレビ局 年収 ランキングと放送業界の資本・収益構造に関する詳細分析
序論:2026年における日本の放送業界の変容と人的資本の重要性
2026年現在、日本のマスメディア産業、とりわけテレビ局を中心とする放送業界は、歴史的な転換期の只中にある。長年にわたり、テレビ局は日本国内の全産業の中でも最高水準の平均年収を誇る業種として君臨してきた。この圧倒的な給与水準は、マスメディアとしての絶大な影響力と、法規制によって守られた盤石な収益基盤(電波法に基づく免許事業としての参入障壁)によって裏付けられてきた1。しかし、スマートフォンの爆発的な普及、ブロードバンド通信網の高度化、そして動画配信プラットフォーム(SVOD・AVOD)への視聴者の不可逆的なシフトに伴い、放送業界を取り巻く事業環境は極めて厳しさを増している1。
このような激動の環境下にあっても、キー局や広域放送を担う準キー局を中心とした主要テレビ局の平均年収は、依然として1,000万円から1,600万円台という極めて高い水準を維持している1。この事象は、単に過去の遺産によって高給が維持されているわけではなく、各社が「地上波テレビ放送事業」という単一のビジネスモデルから脱却し、「不動産事業」「コンテンツ配信・IP事業」「生活・健康関連事業」などを内包する巨大なコングロマリットへと多角化を成功させつつあることの証左でもある1。
本稿では、2026年時点の最新の有価証券報告書や業界動向データを精緻に分析し、テレビ局の年収ランキングを網羅的に提示する。その上で、統計データ(とりわけ認定放送持株会社制度がもたらす平均年収の上振れ効果)の裏側にある実態を解き明かし、各社の給与水準を支える収益構造、ビジネスモデルの優位性、そして人的資本に関する中長期的な課題を浮き彫りにする。
【こんな人におすすめ】
- 放送業界やメディア企業への就職・転職を検討しており、最新の待遇、給与水準、および将来性を正確に把握したい学生および社会人
- テレビ局の多角化された収益構造(不動産開発、IPライセンス、コンテンツ配信など)やビジネスモデルの変容に興味がある投資家・業界アナリスト
- 「認定放送持株会社」という組織形態がもたらす平均年収の統計的な押し上げ効果や、有価証券報告書のデータの実態を深く理解したい研究者
- キー局と地方局における給与格差の構造や、「ネットワーク費」に支えられるローカル経済におけるテレビ局の独占的地位について知見を深めたいビジネスパーソン
放送業界の高年収を決定づける3つの構造的・制度的要因
個別の企業ランキングと数値の分析に入る前に、なぜテレビ局が他業界と比較してこれほどまでに高い年収水準を維持できているのか、その根底にある構造的なメカニズムを理解することが不可欠である。分析の結果、主に以下の3つの要因が相互に作用し、強力な利益創出と高水準の人件費配分を可能にしていることが判明している1。
1. 電波法による極めて高い参入障壁と寡占市場の維持
テレビ局のビジネスモデルにおいて最大の競争優位性は、「電波法」によって新規参入が厳格に制限されている点にある1。テレビ放送事業は、有限な公共の資産である電波を独占的に使用するため、総務省からの免許許認可が必須となる。この制度的要請により、事実上の寡占市場が長きにわたって形成されてきた。新規参入企業による価格競争(広告枠のダンピングなど)が起こりにくい環境が維持されていることが、利益率の低下を防ぎ、安定した高い収益を確保する最も強力な防波堤となっている。結果として、この強固な営業利益が従業員への高い給与として還元されているのである1。
2. 「認定放送持株会社」制度と少数精鋭による労働生産性の極大化
ランキング上位に位置する企業の多くは、「ホールディングス(持株会社)」という名称を冠している。これは2008年の放送法改正によって導入された「認定放送持株会社」制度を利用したものである。この制度により、グループ全体の経営管理を担う純粋持株会社と、実際の番組制作や放送業務を担う事業会社が分離された1。 有価証券報告書に記載される「平均年間給与」は、特段の記載がない限り、この純粋持株会社(提出会社単体)の従業員の給与を指す。例えば、日本テレビホールディングスの場合、グループ全体の連結従業員数は5,771名に達するが、純粋持株会社単体の従業員数はわずか227名である2。フジ・メディア・ホールディングスに至っては、単体従業員数は48名との報告もある4。これらの少数精鋭の組織には、グループを統括する経営幹部や高度な専門職が集約されているため、平均年齢が高く(48歳〜50歳前後)、一人当たりの労働生産性および平均年収が統計的に極めて高く算出されるという構造的バイアスが存在する1。
3. 事業ポートフォリオの多角化(非放送事業とIPビジネスへの依存)
現代の主要テレビ局は、広告収入に依存する単なる「放送事業者」という枠組みをとうに超えている。テレビ局の売上構造は、大きく「放送事業」「非放送事業」「コンテンツ事業」の3本柱によって構成されている1。 特に利益率と安定性の観点で重要なのが非放送事業、すなわち不動産ビジネスである。都心の一等地に広大な土地を保有しているキー局(TBSの赤坂、フジテレビの台場、日本テレビの汐留など)は、不動産賃貸業や大規模な都市開発事業から莫大かつ安定的なキャッシュフローを得ている1。また、自社で開発した知的財産(アニメーション、映画、ドラマ等)を活用したライセンスビジネスや、動画配信プラットフォームへの版権販売など、コンテンツ事業による権利収入も急拡大している1。このような多角的な収益基盤が、広告市場の変動リスクを吸収し、高年収を維持する原資となっている。
2026年 主要テレビ局 平均年収ランキングと企業別深掘り分析
以下の表は、最新の有価証券報告書および業界調査データに基づき、主要なキー局、準キー局、衛星放送事業者、および関連メディア企業の平均年収をランキング化したものである。本ランキングでは、複数の情報源にまたがる数値の矛盾を排除し、各社の経営実態を正確に反映するための基準数値を採用している。

【表1】主要テレビ局 平均年収ランキング(TOP15)
(※) NHKは特殊法人たる公共放送であり、民間企業のような有価証券報告書による平均年間給与の開示が存在しないため、公表されている「35歳大卒モデル給与(2025年度)」の685万円(30歳モデルでは569万円)を参考値として採用している7。
キー局および上位企業の内部構造と年収推移の精緻な分析
ランキング上位を占める企業群の給与データを、年齢別の推移、従業員構成、および事業戦略という観点からさらに深く分析する。ここから見えてくるのは、日本特有の強力な「年功序列」システムと、それを支える多角化された事業ポートフォリオの存在である。
1位:フジ・メディア・ホールディングス(1,660万円)
フジ・メディア・ホールディングスが1,660万円という群を抜いた水準で1位に位置している1。一部の集計では1,580万円とするデータも存在するが4、いずれにせよ国内全産業のトップクラスであることに変わりはない。この極端な高水準は、前述した認定放送持株会社としての純粋な機能に起因する。同社の有価証券報告書によれば、単体従業員数は48名、平均年齢は49.1歳、平均勤続年数は17.9年となっている4。 さらに年齢別の平均年収推移を見ると、20代の時点ですでに996万円という高水準に達しており、その後年齢とともに急激に上昇し、ピーク時には2,324万円に至ると推計されている3。実際のテレビ放送や衛星放送、コンテンツ制作を担う子会社(連結での総従業員数は7,302名1)の給与水準も総じて高いものの、サンケイビル等を通じた大規模な不動産事業がグループ全体の利益率を底上げし、持株会社の経営陣・管理部門に対して莫大な報酬を支払う原資を生み出している1。
2位:日本テレビホールディングス(1,390万円)
2位の日本テレビホールディングスは、平均年収1,390万円(単体従業員227名、平均年齢48.7歳、平均勤続年数17.4年)である2。同グループの特徴は、その多様な連結経営の陣容にある。2025年3月期の有価証券報告書によると、中核となる「メディア・コンテンツ事業」に4,750名の従業員を抱える一方で、「生活・健康関連事業」(フィットネスクラブのティップネス等を含む)に548名、「不動産関連事業」に246名を配置し、全社共通部門を合わせて連結で5,771名という巨大な組織を形成している2。 長年にわたり個人視聴率およびコア視聴率で業界トップクラスを独走しており、その圧倒的なブランド力と広告集稿力が高い給与を裏付けている1。一方で、人的資本に関する開示において、持株会社単体では「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく公表を行っていない(省略している)と記載されており2、純粋持株会社という特性上、ダイバーシティ推進の指標が連結子会社側に委ねられている実態がうかがえる。
3位:テレビ朝日ホールディングス(1,373万円)
テレビ朝日ホールディングスは平均年収1,373万円である1。同社の人件費動向における最大の特徴は、直近9年間において平均年収が+2.8%の持続的な増加トレンドにあることである8。放送業界全体が広告収入の減少に苦しむ中、同社はサイバーエージェントとの強力なアライアンスによるインターネットテレビ局「ABEMA」への戦略的投資を長年継続しており、従来型の地上波放送からデジタル・ストリーミング領域への移行(デジタルトランスフォーメーション)を業界に先駆けて推進してきた1。この将来を見据えたデジタル戦略が市場から評価され、安定した収益と給与増をもたらしている8。
4位:テレビ東京ホールディングス(1,364万円)
4位のテレビ東京ホールディングスは、他キー局と比較して事業規模(売上高)が小さいにもかかわらず、平均年収1,364万円(平均年齢47.0歳、平均勤続年数19.0年)という非常に高い水準を維持している1。年齢別の推移を見ても、20代で913万円、ピーク時には2,130万円に達すると推計されるなど、トップ企業に引けを取らない9。 この高収益の背景には、同社独自のビジネスモデルが存在する。第一に、他局と比較して番組制作費を徹底的に抑えたニッチで独自性の高い企画力である1。第二に、これが最も重要であるが、強力なアニメーションIP(知的財産)を通じた国内外向けのライセンスビジネスの成功である1。『NARUTO』や『BLEACH』をはじめとするメガヒットアニメの海外配信権や商品化権ビジネスは極めて利益率が高く、放送枠という物理的制約を受けずにスケールするため、従業員一人当たりの利益を劇的に押し上げている1。
5位〜7位:衛星放送インフラと、不動産資産に支えられるTBS
5位にランクインしたスカパーJSATホールディングス(1,274万円)は、有料多チャンネル放送事業に加えて、宇宙・衛星通信事業を両輪とする特殊な企業である1。年齢別では20代の762万円からピーク時の1,779万円へと上昇する10。国家の通信インフラとしての側面も持ち、高度なエンジニアリング専門性が要求されるため、給与水準も必然的に高くなる。
7位のTBSホールディングスは、平均年収1,264万円(平均年齢46.2歳、平均勤続年数13.3年)である1。年齢別年収は20代で757万円、その後1,389万円を経て、ピーク時には1,768万円に達する典型的な年功序列カーブを描く5。同社の強みは、東京・赤坂エリア(赤坂サカス、Bizタワー等)に保有する大規模な不動産から得られる莫大な賃貸収入である1。放送事業が赤字に転落した年度であっても、この不動産事業の安定したキャッシュフローが強力なバッファとなり、高水準の配当と従業員給与を維持することを可能にしている5。
地方準キー局とその他の動向に関する特筆事項
9位の朝日放送グループホールディングスに関しては、ベースラインの集計では1,158万円とされているが1、特定の有価証券報告書(第96期など)を参照すると1,314万円(従業員数83名、平均年齢49.3歳、平均勤続年数21.5年)と報告されているケースも存在する13。一方で、直近7年間のトレンド分析では平均年収がマイナス16.4%の減少トレンドにあるとのデータもあり14、純粋持株会社化に伴う人員再編や、業績連動型賞与の変動が数値に大きな影響を与えていることが推測される。年齢別推移では20代751万円、ピーク時1,754万円となっている14。
また、10位のWOWOW(1,047万円〜1,058万円)は、サブスクリプション型の有料放送を主体としており、20代の628万円からピーク時の1,465万円まで上昇する安定した給与体系を持つ1。日本BS放送(13位)は平均年収620万円〜700万円程度と推計され、地上波キー局と比較すると一段落ち着いた水準となる16。

2026年 地方テレビ局 平均年収ランキングとローカル経済における優位性
テレビ業界の高年収構造は、東京や大阪に本社を構えるキー局・準キー局だけの特権ではない。地方都市を拠点とするローカル局(県域放送局)もまた、地域経済においては突出した給与水準を誇っており、各都道府県における「圧倒的なトップクラスの高年収企業」として就職市場(特に地元志向の優秀な学生)から絶大な人気を集めている1。
【表2】地方テレビ局 平均年収ランキング(TOP10)
| 順位 | 企業名(放送エリア) | 平均年収 | 情報ソースURL |
| 1位 | 札幌テレビ放送(北海道) | 1,046万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 2位 | 北日本放送(富山県) | 878万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 3位 | 四国放送(徳島県) | 858万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 4位 | 信越放送(長野県) | 857万円 | https://hw-jobs.careermine.jp/salary/sinetsu-broadcasting |
| 5位 | 長崎放送(長崎県) | 804万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 6位 | 青森放送(青森県) | 788万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 7位 | 新潟放送(新潟県)※ | 776万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 8位 | 北陸放送(石川県) | 719万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 9位 | 秋田放送(秋田県) | 708万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 10位 | 岩手放送(岩手県) | 669万円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
(※) 新潟放送(BSNメディアホールディングス)に関して、一部の個別データでは平均年収699万円(平均年齢40歳)との報告もあるが18、全体の相対評価の観点から包括的なランキング基準値を優先して記載している。また、エリア外の参考値として、長野県の信越放送は20代で505万円、ピーク時で1,178万円に達する19。岡山・香川エリアをカバーするRSKホールディングスは平均年収715万円を確保している20。
地方局が高年収を維持できる「ネットワーク費」と「ローカル広告の独占」
地方局が地域経済において突出した年収(700万円〜1,000万円超)を実現できている理由は、キー局とは根本的に異なる独自のビジネスモデルと収益配分構造に起因する1。
第一の理由は、「ネットワーク費」と呼ばれる放送業界特有の収益分配システムである1。地方局は、ゴールデンタイムなどの主要な放送枠において、東京のキー局が莫大な予算をかけて制作した全国ネット番組をそのまま放送(ネット受け)する。この際、一般的な商取引の感覚であれば「地方局がキー局にコンテンツ購入費を支払う」と想像されがちだが、実際は逆である。地方局は、キー局側から「自社の番組(および付随する全国ナショナルスポンサーの広告)を地方の電波を使って流してくれた対価」として、ネットワーク費(電波料)を受け取る仕組みが存在する1。これにより、地方局は自社での番組制作コスト(人件費や機材費)を極限まで抑えながら、安定した収入を確実に見込むことができるのである。
第二の理由は、地域における圧倒的な広告独占力である1。地方の有力企業(地方銀行、自動車ディーラー、スーパーマーケットチェーン、地元メーカーなど)が、その地域の住民に対して広くマス向けに広告を打とうとした場合、受け皿となるメディアは実質的に数局の地元テレビ局に限られる。電波法に守られた限られた広告枠に対して地元企業が優先的にスポンサーとなるため、ローカル市場において競争が起きにくく、非常に高い利益率を確保できる「局所的な独占利益」が発生している1。1位の札幌テレビ放送(1,046万円)のように、北海道という広大かつ経済規模の大きな独立エリアをカバーする局は、このローカル独占の恩恵を最も強く受けており、キー局に匹敵する給与水準を実現している1。
2026年 テレビ局・メディア企業 売上高ランキングから読み解く事業の多角化
企業の支払い能力の絶対的な源泉となる売上高の規模を確認することで、給与ランキングとは異なる業界の力学と、将来に向けたビジネスモデルの変容が見えてくる。
【表3】テレビ局 売上高ランキング(TOP10)
| 順位 | 企業名 | 売上高 | 情報ソースURL |
| 1位 | フジ・メディア・ホールディングス | 5,356億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 2位 | 日本テレビホールディングス | 4,139億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 3位 | TBSホールディングス | 3,681億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 4位 | テレビ朝日ホールディングス | 3,045億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 5位 | テレビ東京ホールディングス | 1,509億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 6位 | スカパーJSATホールディングス | 1,211億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 7位 | サイバーエージェント | 1,025億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 8位 | 朝日放送グループホールディングス | 870億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 9位 | WOWOW | 771億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
| 10位 | TOKAIホールディングス | 345億円 | https://reashu.com/terebikyoku_nensyu_ranking/ |
売上高構造の深層:放送枠からの脱却とITメディア企業の台頭
売上高ランキングにおいて最も注目すべきインサイトは、「売上高の規模」と「放送事業の強さ」が必ずしも完全には一致しなくなっているという事実である。
首位のフジ・メディア・ホールディングス(5,356億円)は、テレビ局としての顔を持つと同時に、サンケイビルを中心とした強固な都市開発・不動産事業を展開する巨大コングロマリットである1。観光地としての台場エリアの開発や、都心部でのオフィスビル賃貸などによる莫大なキャッシュフローが、売上高を業界トップに押し上げている1。これは3位のTBSホールディングス(3,681億円)にも共通しており、純粋な視聴率争いの結果だけで売上高が決まる時代は終わっていることを示している。
さらに業界の地殻変動を象徴しているのが、7位にランクインしているサイバーエージェント(1,025億円)の存在である1。同社は厳密にはインターネット・IT企業であるが、テレビ朝日との協業による「ABEMA」の展開や、映像コンテンツ制作、スポーツ放映権の獲得などを通じて、実質的に次世代の巨大放送事業者としての地位を確立している。従来の電波法による免許に依存したビジネスモデルではなく、インターネットという開かれたインフラの上で、既存のテレビ局(朝日放送やWOWOWなど)を凌駕する売上高を上げている事実は、今後の放送業界の再編と収益モデルの在り方に極めて重要な示唆を与えている1。視聴者はすでに「どの電波を受信するか」ではなく、「どのプラットフォームで優良なコンテンツを見るか」でメディアを選択しており、このトレンドは2026年以降さらに加速する。
人的資本の構造的課題:年功序列システムと組織の高齢化
ここまで、テレビ局の高い給与水準と強固な収益基盤について論じてきたが、有価証券報告書の各種データをさらに複合的に分析すると、中長期的な経営リスクとなり得る「人的資本に関する構造的課題」が明確に浮かび上がってくる。
突出して高い平均年齢と硬直的な年功序列
各社の有価証券報告書から読み取れる最も顕著な共通点は、従業員の平均年齢が非常に高いことである。日本テレビホールディングスは48.7歳2、フジ・メディア・ホールディングスは49.1歳4、テレビ東京ホールディングスは47.0歳6である。さらに地方・準キー局に目を向けると、中部日本放送に至っては平均年齢53.4歳、平均勤続年数26.9年という驚異的な数値を示している21。また、RKB毎日ホールディングスの過去推移を見ても、2023年3月期で50.8歳、2024年3月期で50.9歳と、50代が平均となっている状況が確認できる22。
この極めて高い平均年齢は、テレビ業界の歴史とともに根付いてきた強固な「年功序列(年齢とともに自動的に給与・役職が上昇するシステム)」を如実に反映している1。本稿で提示した年齢別の平均年収推移(例えばTBSホールディングスの20代757万円からピーク時1,768万円への上昇5、フジ・メディア・ホールディングスの20代996万円からピーク時2,324万円への上昇3)が示す通り、入社後数十年にわたって右肩上がりで人件費が膨張する構造となっている。
この硬直的な年功序列システムと従業員の高齢化は、マスメディアが右肩上がりの成長を遂げていた時代においては、従業員の帰属意識とロイヤルティを高める極めて有効な手段であった。しかし、激しい技術革新が起こり、デジタルネイティブ世代向けのコンテンツ制作や、インターネット配信プラットフォームにおけるアジャイル(俊敏)なサービス開発が求められる現代においては、深刻な足かせとなるリスクを孕んでいる。
なぜなら、膨張し続けるシニア層の固定人件費が企業の利益を圧迫し、次世代を担う若手クリエイターや、高度な専門スキルを持つITエンジニア・データサイエンティストに対して、市場価値に見合った柔軟な報酬を提示するための原資を枯渇させてしまうからである。結果として、実力主義・ジョブ型雇用を基本とするサイバーエージェントのようなIT系メディア企業や、外資系プラットフォーマーとの熾烈な人材獲得競争において、伝統的なテレビ局が劣後する懸念が強まっている。
ダイバーシティと次世代の人的資本経営への移行
また、人的資本の開示義務化が進む中、多様性(ダイバーシティ)の確保も急務である。日本テレビホールディングスの有価証券報告書における、提出会社単体での「女性活躍推進法に基づく公表の省略」という記載2に象徴されるように、持株会社の経営中枢は依然として同質性の高い集団によって構成されている可能性が高い。多様な価値観を持つ現代の視聴者に刺さるコンテンツを継続的に生み出し、グローバル市場への展開を図るためには、組織内部のダイバーシティ推進と、働き方の近代化(評価制度の抜本的な見直し)が避けて通れない課題となっている。
将来展望と総括:2026年以降のテレビ業界が向かうべき道
本分析を通じて明らかになったように、2026年現在のテレビ局は、電波法による高い参入障壁、認定放送持株会社制度による少人数高収益の枠組み、不動産ビジネスによる安定したキャッシュフロー、そして地方局におけるネットワーク費とローカル広告の独占という複合的かつ強固な構造によって、日本国内でもトップクラスの高い年収水準(主要局で1,300万円〜1,600万円台、地方局で700万円〜1,000万円台)を依然として維持している1。
しかしながら、この恵まれた給与水準と盤石に見える経営指標を手放しで礼賛することはできない。組織の高齢化(平均年齢50歳前後)と、ピーク時に2,000万円前後に達する年功序列的な賃金体系は、巨大化する固定費として企業の利益構造を中長期的に圧迫しつつある2。テレビ局各社は現在、既存の既得権益や不動産収入から得られる潤沢なキャッシュを、いかにして次世代のデジタル配信インフラや、世界市場で通用するグローバルIP(テレビ東京のアニメーション事業に見られるような形)の創出へ再投資できるかの重大な岐路に立たされている1。
インターネットを通じたコンテンツ消費へのシフトが不可逆的な潮流となっている現在、テレビ局の真の競合はもはや国内の同業他社ではない。NetflixやAmazon Prime Videoといった巨大な資本力を持つグローバル動画配信プラットフォームや、サイバーエージェントのような新興のITメディア企業への対抗策が急務である1。
放送業界が今後も魅力的な給与水準を維持し、優秀な人材を引き付け続けるためには、制度に守られた「国内向けの電波インフラ事業者」という古い殻を打ち破る必要がある。すなわち、ジョブ型雇用の導入による若手への権限・報酬の委譲、エンジニアリング人材の積極的な登用を通じたデジタル化の推進、そして何より「世界中の人々に視聴されるコンテンツを自ら生み出し、直接届けることができる真の総合コンテンツ・テクノロジー企業」への進化が、2026年以降のテレビ局に強く求められているのである。
引用文献
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- 中部日本放送(9402)の平均年収 – IRBANK, 7月 2, 2026にアクセス、 https://irbank.net/E04376/salary
- RKB毎日 HD(9407)の平均年収 – IRBANK, 7月 2, 2026にアクセス、 https://irbank.net/E04382/salary
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